騎士会のページ

HOME | 聖母の騎士会 | 騎士会のページ | シスター岡のマリアさまのはなし〈23〉

シスター岡のマリアさまのはなし〈23〉

2022年05月23日

(23)アリスティデ・セッラ師:マリアに先立つ女性たち(4)ヨケベド 

コンベンツアル会


 

アリスティデ・セッラ師:マリアに先立つ女性たち(4)ヨケベド 

 

私たちは、聖書学者アリスティデ・セッラ(Aristide Serra)師に導かれて、キリスト教伝統が「メシアの母」の予型として理解していった、旧約聖書の女性たちの姿を見ています。

今回はその四回目。聖書の中にはあまり出てきませんが、ユダヤ教伝統の中でたたえられているヨゲベドについて見てみましょう。

 

ユダヤ教の中で、モーセは最も偉大な「預言者」として現れます。聖書の中で預言者とは「神の言葉を預かる」人のことです。自分のカリスマで「予言」をする人のことではありません。ですから、預言者は、この世の理論、人間の知恵と、しばしば逆行する「神の言葉」、神の知恵を人々に、特に神の民に運ばなければなりません。

 

ですから、大胆でありながら、同時に謙虚であることが求められます。もろく貧しい「土の器」に、偉大な神の宝を運んでいることを知っていなければなりません(二コリント4・7参照)。

 

ヨゲベドは、その偉大な預言者モーセの母です。セッラ師と共に見てみましょう。

 

[参考]

Aristide Serra, La Donna dell’Alleanza. Prefigurazione di Maria nell’Antico Testamento, Edizioni Messaggero Padova, Padova 2006.

 

***

新約の時代、モーセの記憶は「終末的性格」をもっていたということが知られています。

 

モーセはエジプト脱出の時のイスラエルの「最初の」解放者であることから、

「最後」の解放者(決定的な脱出の創造者であるメシア・救い主)の原型となった。

 

ですから、モーセの周りに「メシア的・終末的時」が近づいていることを予感させる描写や物語が生まれたのは自然なことであり、それはモーセの母ヨゲベド(アムラムの妻)についての考察にも当てはまる、とセッラ師は述べています。(ヨゲベドの名前は、出エジプト記6・20、民数記26・59に示されています)。

 

聖書の中にあまり言及のないヨゲベドに関して、ユダヤ教伝統の中で教訓的な物語が開花しました。

 

それらの物語は時として、ナザレのマリアの母性に関する幾つかの側面と驚くほど似ている。

 

とセッラ師は言います。二人の「母」の類似性についての考察の中から、セッラ師は特に一つを挙げています。それは、モーセの母、ゆえに全イスラエルの母としての特徴の中に見るヨケベドです。

 

①ヨケベド、モーセの母、また、すべてのイスラエル人の母

ユダヤ教ラビ伝承の中の、次のような物語をセッラ師は紹介しています。要約すると次のようになります。

 

ある日、ラビ・ユダ・ハナシー(Yehudah HaNasi)(+217)が聖書を解説していた時、会衆は居眠りをしていた。彼らの目を覚まさせるため、彼はこのように断言した。「エジプトで、たった一度の出産で60万人を産んだ女性がいる」。そこにいた高名な弟子、ラビ・イシュマエル(+180年頃)は「その女性は誰か」と聞いた。ラビ・ユダは「それはヨケベドだ。彼女が産んだモーセは、イスラエルの民60万人と等しいと考えられている」と答えた(イスラエルの民は、エジプトで60万人だったと記されています。出エジプト12・37参照)。

 

ラビ・ユダはその理由として、次の聖書の箇所を挙げています。

「モーセとイスラエルの子らは、主に向かって[…]歌った」(出エジプト15・1)。

「イスラエルの子らは[…]主がモーセに命じられた通り行った」(出絵ジプロ39・32)。

「イスラエルには、モーセのような預言者は、再び起こらなかった」(申命記34・10)。

 

ラビ・ユダの聖書解釈によると、これらの箇所の中で、モーセの名と(エジプトで60万人だった)イスラエルの子らの名が結びついて言及されていることは、モーセの中に全イスラエルが含まれていると結論するのに十分であり、その結果、偉大な預言者の母、ヨケベドもまた、モーセの中に要約されている全イスラエルの母である、ということになります。

 

②マリア、イエスの母、そして、彼のすべての弟子たちの母

この、ヨケベドに関するユダヤ教伝承と、マリアの母性に関する福音の教えとの間には「控え目な類似」がある、とセッラ師は指摘します。

 

イエスの母であるマリア(ヨハネ2・1、3、5、12;19・25、26参照)もまた、イエス自身の意志により、愛する弟子の中に存在しているイエスの全ての弟子たちの母として制定された。それが、イエスが十字架から母に言われた遺言の深い意味である。「婦人よ、御覧なさい、あなたの子です」、[それから弟子に言われた]「見なさい、あなたの母です」(ヨハネ19・26、27;黙示録12・5、13、17参照)。

 

ですからマリアは、普遍的な母――キリストの母であり、信仰によってキリストと一つになった人々の母である、とセッラ師は述べています。

 

教皇フランシスコは使徒的勧告『福音の喜び』(2013年)の中で、マリアは、イエスからの民への、私たちへの賜物である、と述べています。

 

死を前にしてのイエスのこのことばは、母親に対するあわれみに満ちた心配りを第一に表現したのではなく、むしろ特別な救いの使命の神秘の宣言である啓示の定式です。イエスはその母を、わたしたちの母として残されました。この後ようやくイエスは、「すべてのことが今や成し遂げられた」(ヨハネ19・28)と思えたはずです。

十字架のもとで、新しい創造の至高の時に、キリストはわたしたちをマリアへと導かれます。キリストは、わたしたちが母なしに歩むのを望んでおられません。ですから聖母へと導いておられます。そして民は、この母のイメージ[母性的イメージ]に、福音のすべての神秘を読み取ります。主は、ご自分の教会の中に聖母の姿[女性の姿]がないことを喜ばれません。(240項)

 

***

次回は、モーセの姉、ミリアムについて見てみましょう。

 


 


 

フランシスコ会
 

お問い合わせ

コンベンツアル会
コンベンツアル会関町修学院 
電話:03-3929-4127
入会に関するお問い合わせ
 
〒177-0051 東京都練馬区関町北4-12-10  
コンベンツアル会
コンベンツアル聖フランシスコ修道会
関町修学院・志願院
Tel. 03-3929-4127 Fax.03-3929-4136
 
*このサイトの無断転載を禁じます。
Copyright コンベンツアル聖フランシスコ修道会養成委員会. All Rights Reserved.